メンタルヘルスにおける使用者の安全配慮義務

吉田善彦
(特定社会保険労務士)
 メンタルヘルスにおいて、使用者にはどのような安全配慮義務がありますか。 使用者には労働者が安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をする義務があります。最近は危険物・有害物における義務よりも、メンタルヘルスにおける義務が注目されています。以下、2 つの事件の判例から、極めて厳しい義務があることを説明します。

1  うつ病発症による自殺をめぐる判例

 広告代理店D社の24歳の男性社員Aが長時間労働でうつ病に罹り、自殺した事件です。
 Aは1990年4 月に入社し、7 月頃から長時間残業が始まり、帰宅しない日も多くなりました。翌年7 月頃には元気がなく、顔色が悪く、目の焦点も定まっていないようで、一緒に仕事をしていた班長もその状態に気づいていました。Aは8 月に取引先での行事を実
                           

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