【特集】公益法人制度改革3法及びFAQ・ ガイドラインの位置づけと監督の姿勢

中島圭一
(なかしま・けいいち 内閣府大臣官房公益法人行政担当室参事官補佐)

明治31年旧民法に始まった公益法人制度は、法人の設立や運営についての不明確さが問題視されていた。これらを踏まえて、いわゆる「公益法人制度改革関連三法」が平成18年に成立、同20年に全面施行された。ここでは新制度について、よくある疑問点を解説する。

はじめに

 公益法人制度は、明治31(1898)年に施行された旧民法に始まる。
 旧民法第34条に基づき設立された従来の公益法人(旧公益法人)は、主務官庁の許可を得て設立された民間非営利法人であり、民間の公益活動の担い手として大きな役割を果たしてきたが、法人の設立・運営の要件について、法律上明確な規定がなく、主務官庁の裁量に委ねられていた結果、その不明確さ等が問題視されていた。
 このことを踏まえて制度の見直しが行われ、現在の公益法人制度となった。本稿では、当該制度に至る見直し(公益法人制度改革)や見直し後の制度(新公益法人制度)の考え方について解説する。
 なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りしておく。

Ⅰ 公益法人制度改革の考え方

 民法制定から一世紀以上がたち、個人の価値観やニーズが多様化するとともに、民間非営利活動に関する関心が高まる中で、各主務官庁の許可を得て設立された法人をめぐり、不適切な運営を行っている法人の存在などが指摘されるようになった。そこで、公益性の判断基準が不明確など旧公益法人制度に関する様々な批判の声が上がるようになった状況を踏まえて、公益法人制度について抜本的な見直しが行われた。いわゆる「公益法人制度改革関連三法」と呼ばれる下記三法は、平成18年5月に成立し、平成20年12月に全面施行された。
・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号。以下「一般法人法」という。)
・公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号。以下「公益認定法」という。)
・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律第50号。以下「整備法」という。)
 これにより、法人の設立許可及び監督を主務官庁の裁量により行うこととしていた旧公益法人制度が改められ、法人は登記により簡便に設立できることとされ、公益法人の認定及び監督は、法定された基準に基づき、民間有識者で構成される合議制の機関(国にあっては内閣府公益認定等委員会、都道府県にあっては各都道府県の合議制機関。以下「委員会等」という。)の関与の下で、行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)が行うこととされた。(図参照
 また、旧公益法人は、行政庁の認定を受けて公益法人に移行するか、認可を受けて一般法人に移行するかを平成25年11月末までに選択することとされた。

図:旧公益法人制度と新公益法人制度の比較

Ⅱ 法人の設立

 一般法人法により、法人は登記により簡便に設立できることとされたところ、その考え方・概要については次のとおりである。

1 制度見直しの考え方

 旧公益法人制度においては、法人の設立は主務官庁の裁量に係る許可によるものとされ、法人格の取得と公益性の判断が一体となっており、こうした点に関し、法人の設立が簡便でないとの指摘が見られた。
 このため、新公益法人制度(一般法人法)においては、法人格の取得と公益性の判断が分離され、公益性の有無にかかわらず、登記により簡便に一般社団法人又は一般財団法人(以下「一般法人」という。)を設立できることとされ、その結果、一般法人として事業活動を行う、あるいは、公益法人として事業活動を行うなど、非営利活動を行う法人格の選択肢が増えることとなった。

2 一般法人法の概要

 一般法人法においては、剰余金の分配を目的としない社団及び財団について、その行う事業の公益性の有無にかかわらず、登記により一般法人としての法人格を取得できることとされるとともに、定款等に基づく法人の自治を一定程度認めつつ、一般法人が我が国の社会における責任ある主体として自律的に活動するために必要な、法人としてのガバナンスに関する基本的な規律が規定されている。

Ⅲ 公益認定の基準

 公益認定法により、一般法人のうち公益目的事業を行うことを主たる目的としている法人は、行政庁に申請を行い、公益認定を受けることができることとされたところ、その考え方・概要については次のとおりである。

1 制度見直しの考え方

 旧公益法人制度においては、法人の設立は主務官庁の裁量に係る許可によるものとされていたところ、許可を与えるか否かの判断基準については、法令上明確な規定がなく、主務官庁の裁量に委ねられており、こうした点に関し、設立が許可されるか否かの予見可能性が低く、公益活動を新たに始めようとする者の意欲をそいでしまうおそれがあるとの指摘が見られた。
 また、休眠法人のような法人が存続し続けているとの指摘や、設立当時には公益事業として評価されていたが社会経済情勢の変化により、営利企業の事業と競合する結果になっている事業又は共益的事業を行っているとみなされるような法人が存在するといった指摘がされていた。
 このため、新公益法人制度(公益認定法)においては、公益認定の基準が定められるとともに、公益認定は当該基準に基づき、委員会等の関与の下、行政庁が行うこととされた。

2 公益認定法等の概要

 公益認定については、公益認定法が認定の基準を詳細に法定するとともに、「公益認定等ガイドライン」(平成20年4月〔平成31年3月改定〕、内閣府公益認定等委員会)(以下「ガイドライン」という。)等が策定されている。
① 公益認定法
 公益認定法においては、「公益目的事業(学術、技芸、慈善その他の公益に関する公益認定法別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業)を行うことが主たる目的であること」等の公益認定の基準(公益認定法第5条各号)や「暴力団員等が事業活動を支配している」等の欠格事由(公益認定法第6条各号)が規定されている。
② ガイドライン
 ガイドラインにおいては、上記公益認定の基準の詳細に加え、「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業」に該当するかどうかを認定するに当たっての留意点として17の事業区分(「検査検定」や「講座、セミナー、育成」など)ごとに、公益目的事業のチェックポイントが示されている。
 当該ガイドラインは、公益認定法等の円滑な施行を図ることを目的として作成されたもので、公益認定法第4条及び第11条の認定等に当たっては、行政手続法(平成5年法律第 88 号)第2条第8号ロの審査基準(以下「審査基準」という。)と位置付けられている。
③ FAQ
 「公益法人制度等に関するよくある質問(FAQ)」においては、具体例に即して、申請や法人運営、会計に関するよくある質問と回答がまとめて掲載されている。
 FAQは、法人・都道府県からの質問を踏まえて適宜改定しており、制度全般について、回答集という形式で内閣府の考え方を示しているものである。

Ⅳ 新公益法人制度への移行

 一般法人法により、法人は登記により簡便に設立できることとされ、公益認定法により、一般法人のうち公益目的事業を行うことを主たる目的としている法人は、行政庁に申請を行い、公益認定を受けることができることとされた。
 整備法は、この一般法人法及び公益認定法の施行に伴う、所要の経過措置等を定めるものであり、旧公益法人は、整備法により、行政庁の認定を受けて公益法人に移行するか、認可を受けて一般法人に移行するかを平成25年11月末までに選択することとされた。
 新公益法人制度が施行した平成20年12月1日時点で約24,000存在した旧公益法人は、約9,000法人が行政庁の移行認定を受けて公益法人となり、約12,000法人は移行認可を受けて一般法人となり、残りの法人は解散・合併等を行った。

Ⅴ 監督の姿勢

 行政庁及び行政庁から権限を委任された委員会等(以下「監督機関」という。)による「監督」は、従来の主務官庁の裁量に委ねられていたものから、法令で明確に定められた要件に基づくものに改められたところ、その考え方については下記のとおりである。

1 制度見直しの考え方

 旧公益法人制度においては、主務官庁が法人の指導監督を行うこととされており、各主務官庁は法人に対する包括的な指導監督権限を有していたところ、こうした点に関し、包括的な指導監督権限は法人に対する行政の安易な介入を招きかねないとの指摘が見られた。
 また、主務官庁からの指導監督命令に違反した場合には設立許可の取消しも可能であったが、実際には機能せず、法人の不適正な業務運営の改善が図られていないのではないかとの指摘も見られた。
 このため、新公益法人制度(公益認定法)においては、公益法人は民間が主体的に活動を行う法人であることを踏まえ、その自律性を確保する観点から、監督に係る要件や措置内容等の規定が定められ、当該規定に基づき、監督機関が監督を行うこととされた。

2 監督の基本的考え方

 公益法人の監督に臨む際の基本的な考え方については、「監督の基本的考え方」(平成20年11月21日、内閣府)において示されており、その内容は下記のとおりである。
<「監督の基本的考え方」のポイント>
 公益法人制度改革により①監督について主務官庁による裁量的なものから法令で明確に定められた要件に基づくものに改められたこと、②法令により法人のガバナンス(内部統治)及び情報開示について詳細に定められたことを踏まえ、また、③不適切な事案は制度に対する信頼を揺るがしかねないこと、④法人の実態を十分に把握しなければ効果的な監督を行うことができないことを考慮し、次のような考え方で公益法人の監督に臨むことを基本とする。
ア 法令で明確に定められた要件に基づく監督を行うことを原則とする。
イ 法人自治を大前提としつつ、民による公益の増進のため公益法人が新制度に適切に対応できるよう支援する視点を持つ。
ウ 制度への信頼確保のため必要がある場合は、問題ある公益法人に対し迅速かつ厳正に対処する。
エ 公益認定申請等の審査、定期提出書類等の確認、立入検査などあらゆる機会を活用して法人の実態把握に努める。

3 監督の具体的措置

① 監督の具体的措置の概要
 公益認定法第2章第3節に「公益法人の監督」が設けられ、次のような措置が規定されているほか、他節に規定されている変更の認定、定期的な事業報告等も公益法人の事業の適正な運営を確保するための措置であり、これら全体を監督の具体的な措置として捉えることとしている。
・立入検査、報告徴収〔法人の事業の適正な運営を確保するために必要な限度において実施〕
・勧告、命令〔認定取消事由に該当すると疑うに足りる相当な理由がある場合において実施〕
・認定取消〔欠格事由該当、行政庁の命令違反、認定基準不適合、公益認定法等の法律違反等の場合において実施〕
② 立入検査
 監督の具体的措置のうち、立入検査に関しては、公益法人等の実態把握のための重要な手段のひとつであることから、内閣府としての立入検査についての原則的な考え方が、「立入検査の考え方」(平成21年12月24日〔平成26年5月14日一部改訂〕、内閣府)において示されており、その内容は下記のとおりである。
<「立入検査の考え方」のポイント>
・立入検査の観点:法令で明確に定められた公益法人として遵守すべき事項に関する公益法人の事業の運営実態を確認するという観点から行う
・実施頻度:概ね3年を目途に全ての法人に対する立入検査が一巡するスケジュールで実施
・制度への理解:必要に応じ、制度への理解を深め、適切な法人運営を支援する観点から、制度の詳細について説明等を行う
・実施方法:定期提出書類や変更の届出などで得られた情報等を活用し、立入検査を行わなければ確認が困難な事項を中心に重点的に検査を実施
・問題ある法人に対する立入検査の実施:公益認定基準や欠格事由等に関連する公益法人の問題点が発覚した場合には、問題点の重大さを勘案して、適時適切に立入検査を実施

4 監督の実施状況

 監督の基本的考え方等は上記のとおりであり、問題ある法人に対しては厳正に対処することになるが、例えば、立入検査等で任意的取消事由に該当するような問題点が見つかった場合であっても、基本的には、直ちに認定取消ということではなく、まずは法人に対し、是正を求めていくことになる。
 この点、監督の実施状況については、移行期間終了後である平成26年度以降、立入検査を年間3,000件行っているほか、近年、報告徴収を年間約110件行っている一方で、勧告や認定取消に至るのは年間数件程度(いずれも内閣府・都道府県の合計)であり、これは監督機関による事業報告等の確認や立入検査等を通じた監督が機能していることの表れであると考えられる。

おわりに

 新公益法人制度について以上のとおり解説してきたが、当該制度は発足からようやく10年が経過したところであり、今後、この新公益法人制度により、公益法人の活動がさらに充実・発展し、「民による公益の増進」の一層の促進につながることを期待する。

執筆者Profile
中島圭一(なかしま・けいいち)
内閣府大臣官房公益法人行政担当室参事官補佐。総務省や福岡市での勤務を経て、現在は、同室において、法人や都道府県からの質問への回答など、法令解釈に関する業務全般を担当。

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