8月の手続き(2020年)

経理・法人運営

【経理・税務】

◆役員退職金の適正額

 法人の役員に退職金を支払う場合、退職慰労金規程を策定し、規程に基づいて支給することが一般的であるが、役員退職金のうち不当に高額である部分は税務上損金の額に算入することができない。
 不当に高額であるか否かの判断は、同業類似法人の退職給与の支給状況との均衡を問題とする傾向が強く、損金算入できる役員退職金の適正額を正確に判断することは困難であるが、一般的には以下の功績倍率法が用いられることが多い。
<功績倍率法>

・役員退職給与の適正額=最終月額報酬×勤続年数×同業類似法人の功績倍率

 なお、最終月額報酬を直前で急減に引き上げるなどした場合に、不当に高額とされた部分は、適正額の算定上は除外される。

【法人運営】

◆移行法人の変更認可申請

 移行法人(整備法の認可を受けて移行の登記をした一般社団・財団法人で公益目的支出計画の実施の完了の確認を受けていないもの。)は、行政庁に公益目的支出計画の実施の完了の確認を受けるまでの間、公益目的支出計画に定めたところにしたがって、公益目的のための支出を適正に行う必要がある。
 移行法人が、公益目的支出計画や、法人の名称等、整備法で定める一定の事項を変更した場合、移行認可を受けた行政庁に対し、変更の手続きをしなければならない。
 変更手続は、変更の内容に応じて、次の2種類の手続きがある。
◯変更認可…変更前に、あらかじめ行政庁の認可を受ける手続き(整備法§125Ⅰ) 
◯変更届出…変更後に、遅滞なく行政庁へ届け出る手続き(整備法§125Ⅲ等)
<変更認可を受けることが必要な場合>
 行政庁から認可を受けた公益目的支出計画を変更する場合には、変更前に、あらかじめ行政庁の認可を受ける必要がある(整備法§125Ⅰ)。「公益目的支出計画の変更」に当たるものは、次のとおりである。
ⅰ 実施事業等の内容の変更
 移行後においては継続事業の追加は認められないので、継続事業の内容を変更する場合は、公益目的支出計画には、変更後の事業を「公益目的事業」として記載する必要がある。
ⅱ 公益目的支出計画の完了年月日の変更
 各事業年度の公益目的支出の額や実施事業収入の額が変更になることにより、公益目的支出計画を延長せざるを得なくなったときは、完了予定年月日の変更を行う必要があり、当該変更について、変更の認可を受ける必要がある。
 なお、各事業年度の公益目的支出の額や実施事業収入の額が公益目的支出計画に記載した計画額と異なる場合であっても、公益目的支出計画が完了予定年月日に終了することが見込まれる場合は、当該事業年度の公益目的支出計画実施報告書において実績額を記載するとともに、同報告書別紙2「4. 2の欄に記載した額が計画に記載した見込み額と異なる場合、その概要及び理由」欄に、実施期間に影響がない旨を記載することとなる(この場合、変更認可及び変更届出の手続きは不要)。

監修 麹町会計事務所代表 清水謙一(税理士・中小企業診断士・CFP)

労務・総務

【労務】

◆平均賃金

 職員が生活できるためにはその者にいくらくらい払えばよいのだろうか。コロナ禍において、休業補償などが話題になり「平均賃金」という概念が注目されている。また、休業補償をしてもらえない者へ対応をどうすればよいのか、問題になっている。急場を凌ぐため、その者にいくら払えばよいのだろうか—。
 この命題を満たす概念に「平均賃金」という考えがある。労働基準法第12条に計算方法が示してある。平均賃金は、様々な場面で活躍する。
 例を挙げると、①解雇するときの予告手当、②年次有給休暇を取得した場合の賃金、③労災で休業した場合の休業補償、そして今回のコロナの影響などで職員を休ませたときに支払う「休業手当」が代表的なものとなる。また、同様の考えに雇用保険においては、賃金日額という概念がある。

◆平均賃金の計算方法

 このように様々な場面で登場する平均賃金だが、正確に計算するのに注意を要する。基本的には過去3か月の平均を計算する。では、どこを起点に3か月とするのか、対象となる賃金とは何か、交通費や残業代も入るのか、など疑問が出てくる。間違いやすい例を挙げると次のとおりとなる。
<交通費の算入>
 平均賃金は「総支給額」で計算する。したがって、交通費や残業代など支払われたものは全て算入しなければならない。よく、解雇予告手当を払うとき「基本給」の1か月分を支払っておしまい、としているケースを見かけるが額が不足していることが多い。
<時給者の場合>
 基本的には過去3か月の賃金を総歴日数で除して計算するが、最低保証という計算があり、労働日数で除して100分の60を乗じたもの、どちらか高い方となる。
<賞与など>
 賞与や一時金など臨時で支払われたものは算入しない。

◆賃金日額

 雇用保険ではこの「賃金日額」という概念を使って給付金を算定している。失業給付や、高年齢雇用継続給付、育児休業給付などもこの概念を使う。計算方法は、ある起点(例えば離職日)の直前6か月間に支払われた賃金の合計額を180で除して求める。算入するもの、しないものは平均賃金とほぼ同様である。この賃金日額がその者の生活を維持する基本になる金額ととらえている。このように社会保険や労働の分野では交通費や残業代も含めて補償金額を計算していることが特徴となっている。

◆新設された給付金

 本年6月12日に雇用保険法が改正されて、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金が創設された。この給付金は、中小企業等において休業手当を受けることができなかった方に対して生活保障のため、雇用保険から給付されるというものだ。退職せずに受け取れることが特徴だ。制度的には、失業給付に近い。金額は、休業前賃金の80%ということになっている。また、雇用保険の被保険者以外も当該給付金を利用することができる。

監修 小島経営労務事務所代表 小島信一(特定社会保険労務士)

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