『総務担当者』が知っておきたい開⽰書類・備置きと閲覧請求があった場合の対応【運営書類編】

吉田宏喜
(よしだ・ひろき 弁護士)

運営書類を作成・管理する総務担当者にとって、数多くある書類をそれぞれどれくらいの期間備置きするべきか、また開示を求められた際にどう対応すべきか、混乱がないよう熟知しておくことが大切である。ここでは、各法令上の規定を整理し解説する。


はじめに

 本稿における法令の定義は、以下のとおりとする。

• 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律→法又は一般法人法
• 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律→認定法又は公益認定法
• 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則→法施行規則
• 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則→認定法施行規則
• 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律→整備法
• 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律施行規則→整備法施行規則
• 個人情報の保護に関する法律→個人情報保護法

1 一般法人法、公益認定法及び整備法が定める備置き・開示

 一般法人法は、法人について、一定の書類(以下、電磁的記録を含む場合も「書類」という場合がある。)を事務所に備え置き、一定の者から閲覧や謄写等の請求があれば、開示に応じなければならない旨を定めている。また、公益認定法は、公益法人について、一般法人法が定めている備置き・開示(注1)について、一般法人とは異なる特別の定めを置いている。
 本稿では、法人が備置き・開示を義務付けられている運営書類について、備置きの方法等について解説するとともに、法人に対して開示請求があった場合の対応について解説するものである(注2)

2 本稿で解説する運営書類

 本稿で解説する運営書類(注3)に関する概要は、のとおりであるが、詳細については、Ⅰで解説する。また、Ⅱにおいて、一般法人法や公益認定法上、備置き・開示が義務付けられているわけではないものの、対応に留意すべき運営書類について解説する。
 なお、代理権を証明する書面及び議決権行使書面以外については、電磁的記録による備置きが可能である(注4)
 また、本稿で解説する運営書類については、備置期間が定められているものがあるが、保存期間が定められているものはないため、備置期間中の保存は必要であるものの、一般法人法・公益認定法上、その後の保存が義務付けられているわけではない(注5)

表:一般法人法・公益認定法・整備法により備置き・開示の対象とされている運営書類

書類の名称(注6) 備置期間(厳密な取扱いはⅠ参照) 根拠法令
定款 常備 法14条・法156条
社員名簿 常備 法32条
代理権を証明する書面 社員総会の日から3か月間 法50条
議決権行使書面 社員総会の日から3か月間 法51条・法52条
社員総会議事録 社員総会の日から主たる事務所に10年間、従たる事務所に5年間 法57条
評議員会議事録 評議員会の日から主たる事務所に10年間、従たる事務所に5年間 法193条
社員総会決議の省略における同意書 社員総会の決議があったとみなされた日から10年間 法58条
評議員会決議の省略における同意書 評議員会の決議があったとみなされた日から10年間 法194条
理事会議事録 理事会の日から10年間 法97条、法197条
理事会の決議の省略における同意書 理事会の決議があったとみなされた日から10年間 法97条、法197条
事業報告及びその附属明細書 定時社員総会・定時評議員会の2週間前の日から主たる事務所に5年間、従たる事務所に3年間 法129条
事業計画書 毎事業年度開始の日の前日までに作成し、当該事業年度の末日まで 認定法
21条
役員等名簿
運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類
毎事業年度経過後3か月以内に作成し、主たる事務所に5年間、従たる事務所に3年間 認定法
21条
公益目的支出計画実施報告書 定時社員総会・定時評議員会の2週間前の日から5年間 整備法
127条

出典:筆者作成

Ⅰ 備置き及び開示請求への対応

1 定款

⑴ 備置き

ア 書面で作成されているとき
 法人は、定款を主たる事務所及び従たる事務所に備え置かなければならない(法14条1項、法156条1項)。
イ 電磁的記録で作成されているとき
 法施行規則93条で定める措置(電子ファイルに記録された情報を、電気通信回線を通じて、法人の従たる事務所のコンピュータに記録)を取っており、従たる事務所で下記⑵ア(ⅰ)③~④の請求に応じることを可能としている法人については、定款は主たる事務所で備え置いていれば足り、従たる事務所に定款を備え置く必要はない(法14条3項、法156条3項)。

⑵ 開示請求への対応

ア 概要
(ⅰ) 一般法人法の定め
 社員、評議員及び債権者は、法人の業務時間内は、いつでも、定款について、以下①~④の請求(注7)をすることができる(法14条2項、法156条2項、法施行規則91条、法施行規則92条)。

① 書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧の請求
② 書面をもって作成されているときは、当該書面の謄本又は抄本の交付の請求
③ 電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
④ 電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるもの)であって法人の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求

 ③の「法務省令で定める方法」については、当該電磁的記録に記録された事項を印刷した書面又はディスプレイに表示する方法とされている(法施行規則91条)。
 また、④のうち、「法務省令で定める電磁的方法」は、以下の3つのいずれかの方法によるものとされている(法施行規則92条1項)。

⒜インターネット等を通じて電子メールを送信する方法
⒝法人のホームページ等に掲示した情報を受信者が閲覧又はダウンロードする方法
⒞一定の情報を記録した磁気ディスク等を相手方に交付する方法

 なお、これらの方法については、受信者がファイルへの記録を出力することにより書面を作成することができる(受信者がファイルから印刷できる)ものでなければならない(法施行規則92条2項)。
(ⅱ) 公益認定法の定め
 公益法人の場合には、何人も、法人の業務時間内は、いつでも、上記①又は③を請求することはできるが(認定法21条4項)、上記②や④を請求することはできない。
イ 開示請求への対応の留意点
(ⅰ) 定款の附属規程(下位規程)の取扱い
 定款の授権規定によって定款の附属規程(下位規程)として設けられる規程についても、備置き・開示の対象となるかについては、直ちに明らかではない。
 例えば、社員の資格の得喪に関する規定は、定款の必要的記載事項になっているが(法11条1項5号)、定款の授権規定に基づいて、当該定款の規定についてさらに詳細に定める社員資格取扱規程を設ける場合、社員資格の得喪について社員はこの社員資格取扱規程に拘束されることになる。そして、社員資格取扱規程に定められた事項は、法人と社員との間に生じる事務手続を画一的に処理するのに必要な事項であるから、法14条・法156条が準用され、備置き・開示の対象となると解される(法14条・法156条が準用されて備置き・開示の対象となることについては、社員総会・評議員会運営規則についても同様であると解される。)(注8)
 これに対し、理事会の議事運営に関する規程は、理事会の開催手続に関するものが主要な内容であって、社員の利害に関する内容は少ないことから、備置き・開示の対象にはならないものと解される。
(ⅱ) 罰則(注9)
 正当な理由がないのに開示請求を拒絶した場合や備置き義務に違反した場合は、理事等が100万円以下の過料に処せられる(法342条4号・8号)。
ウ 法定備置書類の開示に関する取扱いを定める
 定款にかかわらず、法定備置書類の開示請求(閲覧・謄写等の請求)がなされた場合に備えて、その取扱いを全般的に定めたルールを設けておき、請求者間において不平等が生じないよう統一的な取扱いを行うことが考えられる(注10)

2 社員名簿

⑴ 備置き

 一般社団法人及び公益社団法人(以下、併せて「社団法人」という。)は、社員の氏名又は名称及び住所を記載し、又は記録した名簿(社員名簿)を作成し、社員名簿をその主たる事務所に備え置かなければならない(法31条、法32条1項)。

⑵ 開示請求への対応

ア 概要
(ⅰ) 一般法人法の定め
 社員は、法人の業務時間内は、いつでも、以下の①又は②の請求をすることができる(法32条2項、法施行規則91条)。

① 社員名簿が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
② 社員名簿が電磁的記録をもって作成されているときには、当該電磁的記録により記録された事項を紙面又は映像面に表示する方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

(ⅱ) 公益認定法の定め
 公益社団法人の場合には、何人も、法人の業務時間内に、いつでも、①の閲覧の請求・②の閲覧の請求を行うことができるが(認定法21条4項、認定法施行規則35条)、①の謄写や②の謄写の請求はできない。
 なお、公益社団法人の場合には、社員名簿について、社員以外から上記①の閲覧又は②の閲覧の請求があった場合には、これらに記載され又は記録された事項中、個人の住所に係る記載又は記録の部分を除外して閲覧をさせることができる(認定法21条5項)。
イ 開示請求への対応の留意点~請求の理由及び拒絶事由
(ⅰ) 一般法人法の定め
 社員が社員名簿の閲覧又は謄写(上記①~②)を請求するに当たっては、「当該請求の理由」を明らかにする必要がある(法32条2項後段)。
 また、社団法人は、社員から社員名簿の閲覧又は謄写の請求があった場合は、原則として、その請求に応じなければならないが、以下の拒絶事由がある場合には閲覧又は謄写を拒むことができる(法32条3項)。

【一般法人法32条3項】

一 当該請求を行う社員(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二 請求者が当該一般社団法人の業務の遂行を妨げ、又は社員の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三 請求者が社員名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
四 請求者が、過去2年以内において、社員名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

(ⅱ) 公益認定法の定め
 公益社団法人において、社員名簿の閲覧の請求(①の閲覧又は②の閲覧の請求)があった場合は、法人は、正当な理由がないのにこれを拒むことができないとされている(認定法21条4項)。

3 代理権を証明する書面及び議決権行使書面

⑴ 備置き

ア 代理権を証明する書面
 社団法人は、社員総会において、代理人によってその議決権を行使した場合には、社員総会の日から3か月間、代理権を証明する書面を主たる事務所に備え置かなければならない。
 また、社団法人は、社員総会において、社員が代理権を証明する書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供して議決権を行使した場合には、社員総会の日から3か月間、当該電磁的方法により提供された事項が記録された電磁的記録を主たる事務所に備え置かなければならない(法50条5項)。
イ 議決権行使書面
 社団法人は、社員総会において、社員が書面によって議決権を行使した場合には、社員総会の日から3か月間、社員から提出された議決権行使書面を主たる事務所に備え置かなければならない(法51条3項)。
 また、社団法人は、社員総会において、社員が電磁的記録によって議決権を行使した場合には、社員総会の日から3か月間、社員から提供された議決権行使書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録を主たる事務所に備え置かなければならない(法52条4項)。 

⑵ 開示請求への対応

ア 概要
 社員は、法人の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる(法50条6項、法51条4項、法52条5項、法施行規則91条)。

① 代理権を証明する書面又は議決権行使書面の閲覧又は謄写の請求
② 代理権を証明する書面又は議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により記録された電磁的記録を紙面又は映像面に表示する方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

イ 改正一般法人法の定め
 令和3年3月1日に施行された改正一般法人法は、以下のとおり定めている。
 社員が代理権を証明する書面又は議決権行使書面の閲覧又は謄写(上記①~②)を請求するに当たっては、「請求の理由」を明らかにする必要がある(改正一般法人法50条6項、51条4項、52条5項)。
 また、社団法人は、社員から代理権を証明する書面又は議決権行使書面の閲覧又は謄写(①又は②)の請求があった場合は、原則として、その請求に応じなければならないが、法32条3項に記載の拒絶事由がある場合には閲覧・謄写を拒むことができる(改正一般法人法50条7項、51条5項、52条6項)。

4 社員総会議事録及び評議員会議事録

⑴ 備置き

 法人は、社員総会・評議員会の日から10年間、社員総会議事録・評議員会議事録を主たる事務所に備え置かなければならない(法57条2項、法193条2項)。
 また、法人は、社員総会・評議員会の日から5年間、社員総会議事録・評議員会議事録の写しを従たる事務所に備え置かなければならない(法57条3項、法193条3項)。
 社員総会議事録・評議員会議事録が電磁的記録をもって作成されている場合であって、法施行規則93条で定める措置(電子ファイルに記録された情報を、電気通信回線を通じて、法人の従たる事務所のコンピュータに記録)を取っており、かつ、従たる事務所で下記⑵②の請求に応じることを可能としている法人については、従たる事務所に社員総会議事録・評議員会議事録の写しを備え置かなくてもよい(法57条3項ただし書、法193条3項ただし書)。
 なお、備置きの始期については、一般法人法上、「社員総会の日から」、「評議員会の日から」(法57条2項、法193条2項)と定められていることから、これを文字どおり解すると、社員総会議事録・評議員会議事録は、会議がなされた当日に作成を終え、翌日から備え置かなければならない、ということになる(民法140条参照)。
 しかし、社員総会・評議員会の当日に議事録の作成を終え、翌日から備え置くことは困難な場合が多いと思われることから、可及的速やかに作成して備え置いたのであれば、翌日から備え置くことができなかったとしても、備置義務違反にはならないと解される。

⑵ 開示請求への対応
① 社員・評議員及び債権者は、法人の業務時間内は、いつでも、社員総会議事録・評議員会議事録又はその写しの閲覧又は謄写を請求することができる(法57条4項1号、法193条4項1号)。
② 社員総会議事録・評議員会議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を紙面又は映像面に表示する方法により表示したものの閲覧又は謄写を請求することができる(法57条4項2号、法193条4項2号、法施行規則91条5号)。

5 社員総会決議・評議員会決議の省略における同意書

⑴ 備置き

 法人は、社員・評議員全員が書面又は電磁的記録による同意の意思表示をしたことにより社員総会・評議員会の決議があったものとみなされた日から10年間、当該同意の書面又は電磁的記録(注11)をその主たる事務所に備え置かなければならない(法58条2項・法194条2項)。

⑵ 開示請求への対応

ア 概要
 社員・評議員及び債権者は、法人の業務時間内は、いつでも、①同意書面の閲覧又は謄写の請求、②同意の意思表示に係る電磁的記録に記録された事項を紙面又は映像面に表示する方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求をすることができる(法58条3項、法194条3項、法施行規則91条6号)。
イ 社員総会議事録・評議員会議事録の開示請求への対応
 全社員・全評議員の同意によって議案が可決されたものとみなされた場合であっても、社員総会・評議員会の議事については、法務省令に定めるところにより、議事録を作成しなければならない(法57条1項、法施行規則11条1項・4項、法193条1項、法施行規則60条1項・4項)。
 また、社員総会議事録・評議員会議事録については、社員総会・評議員会が終結したときとみなされた日から10年間、主たる事務所に備え置き、その写しを5年間、従たる事務所に備え置かなければならない(法57条2項・3項、法193条2項・3項)。
 社員・評議員及び債権者から、上記①~②(同意書面の閲覧・謄写等)の請求があった場合には、併せて、社員総会議事録・評議員会議事録の開示請求(閲覧又は謄写の請求)が行われることが一般的であると思われるので、その開示請求への対応も必要となるであろう。

6 理事会議事録及び理事会の決議の省略における同意書

⑴ 備置き

 法人は、理事会の日から10年間、理事会議事録を主たる事務所に備え置かなければならない(法97条1項、法197条。なお、備置きの始期については、社員総会議事録・評議員会議事録と同様)。
 また、法人は、議決に加わることができる理事全員が書面又は電磁的記録による同意の意思表示をしたことにより理事会の決議があったものとみなされた日から10年間、同意の意思表示を記載した書面又は記録した電磁的記録をその主たる事務所に備え置かなければならない(注12)(法96条、法97条1項、法197条)。

⑵ 開示請求への対応

ア 概要
(ⅰ) 理事会議事録
 社員は、その権利を行使するために必要があるときは、裁判所の許可を得て、以下の①~②を請求することができる(法97条2項、法施行規則91条)。

① 理事会議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
② 理事会議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を紙面又は映像面に表示する方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

 評議員は、法人の業務時間内は、いつでも、上記①~②を請求することができる(法97条2項、法197条、法施行規則91条)。
 債権者は、理事又は監事の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、上記①~②を請求することができる(法97条3項、法197条、法施行規則91条)。

(ⅱ)理事会の決議の省略における同意書
 理事会の決議の省略における同意書についても、(ⅰ)と同様である。
イ 理事会の決議の省略における同意書の開示請求があった場合の対応の留意点
 法96条に基づいて理事会決議があったものとみなされた場合(理事会の決議の省略)であっても、理事会議事録を作成しなければならない(法施行規則15条4項1号)。したがって同意書と同様に、当該理事会議事録も備置き・開示の対象となるものと解されるため、留意が必要である(5⑵イと同様)。

7 事業報告及びその附属明細書

⑴ 備置き

 法人は、定時社員総会・定時評議員会の日の2週間前(理事会非設置一般社団法人の場合は、1週間前)の日から5年間、事業報告及びその附属明細書を主たる事務所に備え置かなければならず、かつ、3年間、事業報告及びその附属明細書の写しを従たる事務所に備え置かなければならない(法129条1項・2項、法199条)。
 従たる事務所での備置義務については、従たる事務所において、下記⑵ア(ⅰ)③及び④の請求に応じることを可能とするための措置として、法務省令で定めるもの(定款と同様の措置〔1⑴イの措置〕)をとっているときは、写しを備え置く必要はない。

⑵ 開示請求への対応

ア 一般法人法の定め
 社員、評議員及び債権者は、法人の業務時間内は、いつでも、事業報告及びその附属明細書について、以下の①~④を請求することができる(法129条3項、法199条、法施行規則91条、法施行規則92条)。

① 書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求
② 書面をもって作成されているときは、当該書面の謄本又は抄本の交付の請求
③ 電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を紙面又は映像面に表示する方法により表示したものの閲覧の請求
④ 電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を、電磁的方法であって法人の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求

 なお、上記③と④の請求については、定款(1⑵ア(ⅰ)の③~④)と同様であるため、そちらを参照されたい。

イ 公益認定法の定め
 公益法人の場合には、社員・評議員・債権者以外の者も、業務時間内に、いつでも事業報告及びその附属明細書の閲覧を請求することができるが、謄本等の交付は請求できない(認定法21条4項)。

8 事業計画書

⑴ 備置き

 公益法人は、毎事業年度開始日の前日までに、当該事業年度の事業計画書を作成し、当該事業年度の末日までの間、当該書類を主たる事務所に、その写しを従たる事務所に備え置かなければならない(認定法21条1項、認定法施行規則27条)。
 事業計画書が電磁的記録をもって作成されている場合であって、その従たる事務所における下記⑵ア②に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として、定款(1⑴イ)と同様の措置をとっている公益法人については、事業計画書は主たる事務所で備え置いていれば足り、従たる事務所に事業計画書を備え置く必要はない(認定法21条6項、認定法施行規則36条)。

⑵ 開示請求への対応

ア 概要
 何人も、公益法人の業務時間内は、いつでも、事業計画書について、以下①~②に掲げる請求をすることができる。
 この場合においては、当該公益法人は、正当な理由がないのにこれらの請求を拒むことができない(認定法21条4項、認定法施行規則35条)。

① 書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求
② 電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を紙面又は出力装置の映像面に表示する方法により表示したものの閲覧の請求

イ 罰則(注13)
 事業計画書の備置義務違反があった場合、違反者は、30万円以下の罰金に処せられる(認定法64条3号)。

9 役員等名簿、運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類

⑴ 備置き

 公益法人は、毎事業年度経過後3か月以内に、役員等名簿、運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類を作成し、当該書類を5年間その主たる事務所に、その写しを3年間その従たる事務所に備え置かなければならない(認定法21条2項、認定法施行規則28条)。
 なお、これらの書類が電磁的記録をもって作成されている場合に、従たる事務所に備え置かなくて済むようにするためには、事業計画書(8⑴の記載)と同様の措置をとっておく必要がある(認定法21条6項、認定法施行規則36条)。

⑵ 開示請求への対応

 何人も、公益法人の業務時間内は、いつでも、役員等名簿、運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類について、以下①~②に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該公益法人は、正当な理由がないのにこれらの請求を拒むことはできない(認定法21条4項)。
 ① 書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求
 ② 電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を紙面又は出力装置の映像面に表示する方法により表示したものの閲覧の請求
 なお、公益法人は、役員等名簿について当該公益法人の社員又は評議員以外の者から上記①~②の請求があった場合には、これらに記載され又は記録された事項中、個人の住所に係る記載又は記録の部分を除外して閲覧させることができる(認定法21条5項)。

10 公益目的支出計画実施報告書

⑴ 備置き

 移行法人は、定時社員総会・定時評議員会の2週間前の日(理事会非設置一般社団法人である移行法人は1週間前の日)から5年間、その主たる事務所に公益目的支出計画実施報告書を備え置かなければならない(整備法127条5項)。
 なお、社員総会・評議員会の決議の省略の場合は、社員総会・評議員会の目的である事項について提案があった日から5年間の備置きとなる(整備法127条5項)。

⑵ 開示請求への対応

ア 概要
 何人も、移行法人の業務時間内は、いつでも、公益目的支出計画実施報告書について、次の請求をすることができる。なお、この場合においては、当該移行法人は、正当な理由がないのにこれを拒んではならない(整備法127条6項、整備法施行規則46条)。

① 書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求
② 電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を紙面又は出力装置の映像面に表示する方法により表示したものの閲覧の請求

イ 罰則
 正当な理由がないのに開示請求を拒絶した場合や備置義務に違反した場合は、移行法人の理事等が100万円以下の過料に処せられる(整備法149条2号・3号)。

Ⅱ その他対応に留意すべき書類

1 個人情報保護法関連の書類

⑴ プライバシーポリシー等

 個人情報保護法7条1項の規定に基づき、政府が策定した「個人情報の保護に関する基本方針」において、「個人情報取扱事業者は、法の規定に従うほか、…個人情報保護委員会のガイドライン…等に則し、例えば、消費者の権利利益を一層保護する観点から、個人情報保護を推進する上での考え方や方針(いわゆる、プライバシーポリシー、プライバシーステートメント等)を対外的に明確化するなど、個人情報の保護及び適正かつ効果的な活用について主体的に取り組むことが期待されている…」とされている。
 プライバシーポリシー等を策定・公表することが法令上の義務とまではいえないと思われるものの、法人においても、プライバシーポリシー等を策定・公表等することが望ましいといえる。

⑵ 個人情報保護規程等

 個人情報保護委員会が定める「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」の「8-2 個人データの取扱いに係る規律の整備」において、「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい等の防止その他の個人データの安全管理のために、個人データの具体的な取扱いに係る規律を整備しなければならない。」とされており、公益法人・一般法人においても、個人データの具体的な取扱いに係る規律(個人情報保護規程等)を整備する必要があると解される。
 ただし、個人情報保護法上、個人情報保護規程等に関する備置きや開示に係る規定はなく、当該規程を整備した場合でも、備置きや開示の対象にはならないと考えられる。

2 招集通知や参考書類

 一般法人法や公益認定法に備置きや開示に係る規定はなく、理事会招集通知、社員総会・評議員会招集通知、社員総会・評議員会参考書類は、備置きや開示の対象にはならないものと解される。ただし、これらの書類が法定開示書類(理事会議事録、社員総会議事録・評議員会議事録等)の一部とされている場合には、これらの書類と併せて備置きや開示の対象になることはあり得るであろう。

3 就任承諾書、辞任届、欠格事由確認誓約書等

 理事等の就任承諾や辞任の意思表示は、要式行為とされていないので、口頭で行うこともできないわけではないが、登記実務との関係から、就任承諾書や辞任届という書面を理事等から提出してもらうことが一般的である(変更登記を申請する際の添付書類として必要となることが一般的。法320条参照)。しかし、一般法人法や公益認定法上、就任承諾書や辞任届が備置き・開示の対象となるものではない。
 また、実務上は、理事等の選任に当たって、欠格事由(法65条や認定法6条等)に該当しないことを確認するための欠格事由確認誓約書等を提出してもらうことも行われていると思われるが、これも、一般法人法や公益認定法上、備置き・開示の対象となるものではない。

4 その他の規則・規程等

 文書取扱規程、印章管理規程、資金運用規程等の各種の規則・規程については、一般法人法や公益認定法上、備置き・開示の対象となるものではなく、一般法人法や公益認定法以外の法令により個別に義務付けられることがない限り、備置きや開示の対象とはならないものと考えられる。

おわりに

 本稿においては、法人が備置き・開示を義務付けられている書類について、備置きの方法等について解説するとともに、法人に対して開示請求があった場合の対応について解説してきた。また、一般法人法や公益認定法上、備置き・開示が義務付けられているわけではないものの、対応に留意すべき書類についても解説してきた。
 本稿が、一般法人法・公益認定法上、備置き・開示を義務付けられている書類への対応を検討する際に、多少なりとも参考になれば幸いである。

[注]
(注1)本稿でいう「開示」は、備置義務が課されている書類(電磁的記録を含む。)の閲覧や謄写等の請求に応じて開示することを指すものとし、それ以外は含まないものとする。
(注2)なお、本稿では、清算や合併等における特殊な開示については触れない。
(注3)一部の書類については、備置き・開示とは別に、公告、行政庁への提出、社員・評議員への提出・提供、定時社員総会・定時評議員会への提出・提供を行わなければならないものがあるが、本稿では解説を省略する(本稿では、これらは「開示」には含めない。)。
(注4)代理権を証明する書面及び議決権行使書面については、社員ごとに書面か電磁的記録かが異なっており、それらの書面・電磁的記録を備え置くほかなく、書面か電磁的記録かが一律に定まるものではないと思われる。
(注5)あくまでも、一般法人法や公益認定法で義務付けられているわけではないというだけであるため、それ以外の理由により保存が必要となる可能性があることを否定するものではない。
(注6)以下の書類については、本稿では解説を行わない。
・計算書類(貸借対照表及び損益計算書〔正味財産増減計算書〕)及びその附属明細書

・監査報告及び会計監査報告
・収支予算書
・資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類
・財産目録
・理事、監事及び評議員に対する報酬等の支給の基準を記載した書類
・キャッシュ・フロー計算書
・会計帳簿
・特定費用準備資金の取崩しについての定め、特定費用準備資金の積立限度額及び算定の根拠
・寄附等による財産で交付した者の定めた使途に従って使用し又は保有しているものの明細
・寄附等による財産で交付した者の定めた使途に充てるために保有している資金の明細
・特定の財産の取得又は改良に充てるために保有する資金の明細

(注7)厳密な整理ではないが、開示請求に関する大まかなイメージ(あくまでイメージであるが)としては、①書面の閲覧(書面を見るだけ)、②書面のコピーを入手、③電子データの閲覧(電子データを見るだけ)、④電子データの閲覧(見るだけ)にとどまらず、電子データのコピー等を入手する、というイメージになると考えられる(②と④については、書類・電子データによって、厳密な取扱いは異なることがある。)。また、公益認定法で定められている開示については、①又は③に限定されている。
(注8)社員資格取扱規程について、定款の授権規定が存在しない場合には、法14条・法156条が準用されず、備置き・開示の対象とはならないと解する余地がある。しかし、定款の授権規定なしに社員資格取扱規程を定めたとしても、法11条1項5号に反するとして、社員資格取扱規程が無効となる可能性が高い。
(注9)一般法人法により備置き・開示が義務付けられている書類については、開示請求を拒絶した場合や備置義務に違反した場合は、同様に、理事等が100万円の過料に処せられる(法342条4号及び8号。定款、社員名簿、代理権を証明する書面及び議決権行使書面、社員総会議事録・評議員会議事録、社員総会決議・評議員会決議の省略における同意書、理事会議事録及び理事会の決議の省略における同意書、事業報告及びその附属明細書)。
(注10)この場合、例えば、開示請求への対応に際し、謄写又は謄抄本の交付等について手数料(コピー代等)を申し受けることもあり得るだろう。
 なお、定款については、一般法人法上、評議員以外の請求者(社員・債権者)は、前記②又は④の請求については、法人が定めた費用を支払う必要があるとされているが(法14条2項ただし書、法156条2項ただし書。事業報告も同様。法129条3項ただし書・法199条)、これは、定款や事業報告の場合は、謄本等の「交付」を請求できるとされているからであると考えられる。
 定款と事業報告以外の法定備置書類の場合は、請求者は「謄写」を請求できるという定め方がされているが、この場合、費用負担についての定めは置かれていない。「謄写」とは、請求者本人が書き写す等してコピーすることであり、法人が謄写に代えてそのコピーの交付を要求された場合、応じる義務があるわけではない。もっとも、法人としては、請求者本人に謄写させるより、コピーを取って渡す方が紛失のおそれもなく容易なので、そのように対応する方が合理的な場合が多いであろう。この場合、「謄写」を請求する請求者は、本来は、自分の費用負担で謄写すべきであるから、法人がコピーを交付するのであれば、法人は、請求者に対して、合理的な金額のコピー代等を請求できると解される。
(注11)社員総会決議・評議員会決議の省略における提案書が備置き・開示の対象とならないか、という点については、提案書は備置き・開示の対象とはならないと考えられる。理由は以下のとおりである。
 法58条1項は、「…社員総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき社員の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは…」と定め、また、同条2項は、「…前項の規定により…同項の書面又は電磁的記録をその主たる事務所に備え置かなければならない。」と定めているところ、備置き・開示の対象となっている法58条1項の「書面又は電磁的記録」は、同意の意思表示に関するものしか記載されておらず、提案については、一般法人法上は、「書面又は電磁的記録」で行う旨の規定がなく、「提案をした場合」としか記載されていないことから、備置き・開示の対象とはされていないと解される(この点については、法194条が法58条と同様の内容であることから、評議員会の決議の省略にも当てはまる。)。
(注12)理事会決議の省略における提案書が備置き・開示の対象とならないか、という点については、提案書は備置き・開示の対象とはならないと解される。理由は、社員総会決議・評議員会決議の省略における提案書と同様である(法96条、法97条、法197条参照)。
(注13)役員等名簿、運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類についても、備置義務に違反した場合は、違反者は、30万円の罰金に処せられる。
執筆者Profile
吉田宏喜(よしだ・ひろき)
弁護士。東北大学法学部卒。東北大学大学院法学研究科総合専攻修了を経て、弁護士登録。
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